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自己啓発的な読書のコツ

投稿日:2018年5月18日 更新日:

私たちは何かにつけて「物事には正解がある」と考えます。テストを受けているわけでもないの一定の「型」を求め、「自由に」「思ったままに」「感じたままに」といった個人の裁量に任せられるとかえって戸惑います。それはおそらく学校教育の弊害です。学校教育のお陰でリテラシーを身につけるので悪く言うのは筋違いですが、いつかは学校で学んだことを超えていかなくてはなりません。

国語の文章題では要旨を掴む問題に高得点が配されています。そしてそれに失敗すると、漢字の読み書きや接続詞の穴埋めができたとしても、そこそこの点数しか取れません。こうした経験を繰り返す中で、文章から著者の主張とそれを証明する具体例を選り分け、要旨を掴むのが大切なことだと考えるようになります。

著者のメッセージを理解するのは確かに大切です。しかし、それだけが全てではありません。本を読んでいると時折、文章の趣旨とは全く違う形で閃きが起こり、自分だけが勝手に納得する瞬間があります。そういう瞬間こそが、読書のもう一つの価値です。

「TQ-心の安らぎを得る究極のマネジメント」という時間管理について書かれた本があります。著者はシステム手帳「フランクリンプランナー」を生んだハイラム・スミスです。単なる効率追求ではない、自分の価値観や欲求に基づいた時間管理の有効性について説いた内容ですが、正直なところ、私はまったく実践していません。

ただこの本の中盤に「思いの窓」という概念が出てきて、それを説明する下りがあります。著者のハイラム・スミスはある時、スラムの学校で不良学生たちに講義をします。「私たちはみんな思いの窓を持っている。人にはそれぞれ思いがあり、それがその人の行動に表れている」と教壇で説明しますが、彼らはまったく聞く耳を持ちません。

そんな中で、奇抜な髪型に奇抜なファッションをした一人の生徒が著者を挑発します。「思いの窓だって? そんなものがあるのなら証明してみろよ」著者はこれにうなずき、彼に問いかけます。「君のその髪型には、君の思いが表れている。なぜ君はその髪型をしているのだろう?」

長い長い沈黙の後、その生徒はこう答えました。「親父に見てほしいから」私はこれまでに数千冊読んできましたが、ここまで心を揺さぶられた会話は他にありません。著者が問いかけて、生徒が答える。文章にすればたった二行です。けれどもその瞬間に、一体どれだけの覚悟がお互いに必要だったのか。そこには永遠に近いような、ゆっくりで濃密な時の流れがあります。

人間はただ質問すれば、素直に答えるというものではありません。相手の存在を丸ごと全て受け止めるつもりがあるから、相手も心の深い部分を開いて見せてくれます。ああした方がいい、こうした方がいい、といった薄っぺらなアドバイスは無意味どころか、害悪でしかありません。それに思い至った時、私はそれまでの自分の生き方や仕事を恥じ、本当に相手のためになる仕事しようと心がけるようになりました。

人と人間とのやりとりには、時にこうした真剣さが必要です。この私の気づきには、「TQ」という本の趣旨も、著者が説明している「思いの窓」もほとんど関係がありません。自分が勝手に意味を見つけて、自分で勝手に納得する。これが自己啓発的な読書です。

読書は何のためにあるのでしょう。自分が知らない事実や考え方、仕組みを学ぶため、というのも間違いではありません。私もそういった勉強的な読書ももちろんします。しかし啓発的な読書も同じくらい大切です。人間が感動するのは、それが自分の存在の奥深くに響いたからです。自分の心が反響する構造を持っていたからです。それに気付き自分の心に生まれる思いを「知恵」と言います。

一冊の本からたった一箇所でも自分の知恵に繋がれば、それは自分にとって素晴らしい一冊となります。とはいえ著者さんの主張を無視するのも失礼ですし本末転倒です。ですから一冊の本から一つのメッセージを受け取り、一つの知恵が生まれれば、それが最高の読書です。私たちは別に機械になろうとしていわけではないのですから、一字一句間違えずに覚える必要はありません。

知識は外側からやってきて、知恵は内側からやってきます。読書はその二つをもたらしてくれます。本を読む時はただ受け取ろうとするだけでなく、自分の心に注意を払って、そこに何か気づきがないか確かめてみてください。正しい理解や正確な暗記にこだわるよりも、ずっと実りのある読書体験になるはずです。

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