「夢を諦める」という決断

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「夢を追いかけることは素晴らしい」と言われています。しかし、いつまで経っても叶わない夢を追いかけ続けるのは悪夢です。「自分はいつまでこんなことを続けているのか」という苦しみは、筆舌に尽くしがたいものがあります。しかも、一度こうした状態になると、簡単には抜け出せません。
どうすれば、その難しい状況から抜け出せるのか。「夢を諦めて次に進む」というのは、一つの決断です。そして、決断には「人物の影響」が関係しています。年齢や収入について考えても、決断にはなりません。それではたとえ諦めたとしても、心のどこかに未練が残り、結局次に進めなくなってしまいます。
人物の影響には、「原動力」と「呪縛」の2種類があります。誰かの言動が喜びや怒りになって、自分の決断を促してくれる。その影響が原動力です。誰かの言動が悲しみや常識になって、自分の決断を妨げてくる。その影響が呪縛です。夢を諦める決断には、呪縛が関係しています。
「僕は人を殺したことがあるんです」

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ある男性が自分の夢を諦められたのは、昔交際していた女性のことを思い出したのがきっかけでした。その男性はミュージシャンになるという夢のために、彼女にできた子供を相談して堕ろしていました。そのことについて、彼は「僕は人を殺したことがあるんです」と私に言いました。それが「自分は夢を諦めてはいけない」という呪縛になっていました。
夢を追いかけると、周りの人間に迷惑や心配をかけます。これだけ迷惑をかけて、これだけ心配をかけて、自分にできることはたったのこれだけなのか。そう絶望することも珍しくありません。その絶望が何度も重なると、夢を追いかけることが願望から義務に変わります。そうなった時が、自分の夢を諦める時です。
呪縛に気づくコツは相談です。あまりに深い悲しみは忘却してしまい、一人では思い出せなくなります。最初はただ思い出さないようにしているだけですが、そのうち本当に思い出せなくなります。しかし、そんな記憶も誰かの話を聞いている時にふと、「自分も似たようなことがあった」と連想が働くと、思い出すことができます。
彼の場合は、私と話していて偶然「死の影響」の話題になり、それがきっかけで子供を堕ろしたことを思い出しました。「こんなに大切なことを忘れてしまっていたなんて信じられません」と彼は言いました。それは断じて忘れているフリではありません。本当に思い出せなくなってしまうのです。そして、その忘れていた分だけ、彼は苦しみ続けていました。
人物の影響に気づくことで起きる変化

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死の影響に対してできることは弔いしかありません。堕ろした子供について、彼は「お墓もありません。心の中ですまなかったと供養し続けようと思います」と言いました。そう向き合うことで呪縛から抜け出し、「ミュージシャンになる」という夢を諦める決断ができたのです。
それからしばらくして彼は占いを学び始めました。ミュージシャンを目指している時は「本当になれるのか?」という不安しかなかったそうです。それが初めて占いに触れた時は、「自分はこれを一生続けられると」と感じたそうです。また翌年には働いている会社から管理職昇進の打診があり、受け入れることにしました。
これが「夢を諦める決断」の結果です。新しい出会いや出来事は、これまで受けていた人物の影響から抜け出した時に、入れ替わるようにして始まります。もちろん夢を諦めたからといって、次の日にすぐに何かが起きるわけではありません。「人物の影響」の変化が現実に反映されるには年単位の時間がかかります。だからこそ人物の影響は見落とされがちになり、それが決断できない原因になっています。
自分だけの夢を終わらせる

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「ミュージシャンになりたい」「漫画家になりたい」「小説家になりたい」「起業したい」。そうした夢を持つのは素晴らしいことです。しかし、残念ながらすべての夢が叶うわけではありません。それどころか叶わずに終わる夢の方がずっと多いのが現実です。
自分の夢は他人を巻き込めるからこそ叶います。ミュージシャンになれるのは、リスナーやレコード会社を巻き込めたからです。漫画家や小説家になれるのは、読者や出版社を巻き込めたからです。誰も巻き込めず、自分だけの夢で留まってしまうのなら、その夢は叶いません。そして、その時間が長ければ長いほど、苦しみは大きくなります。
自分の夢を追いかけることに疲れたら、「自分の心に誰がいるのか」と問いかけてみてください。そして、もし夢を追いかけることが、その人物に対する罪悪感の裏返しでしかないのなら、今の夢は諦めて次に進みましょう。自分だけの夢を諦めると、本当の意味で人と交われるようになり、新しい未来が開けてきます。