マインドレコーディング

「好きだから」よりも説得力のある志望動機の作り方

志望動機のポイントは「人間関係」

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就職や転職でたずねられて、返答に詰まりがちな志望動機。「志望動機なんて浮かばない、思いつかない、わからない」とお手上げの人も多いと思います。一体どうすれば、自分も相手も「なるほど」と納得できる志望動機を作れるのか。そのポイントは「人間関係」です。

面接官になったつもりで想像してみてください。「お金が欲しいから」「家から近くて通いやすいから」といった志望動機の人間を雇いたいと思うでしょうか。「お金が欲しい」「通いやすい」というのは、自分の利益です。しかし、仕事というのは相手の役に立つ商品やサービスを提供し、その見返りに金銭を受け取る行為です。そのために存在する会社の志望動機で、自分の利益について話しても仕方ありません。

よく言われる「好きだから」という志望動機も、「自分の利益」に当てはまります。たとえば、「クルマが好きだから整備士になりたい」という志望動機の場合、「クルマが好きな自分」の話だけで人間関係が含まれていません。それでは「誰かの役に立つ」という仕事の趣旨から外れてしまいます。

「お金がほしいから」「通いやすいから」「好きなことだから」といった考えが間違っているのではありません。お金は誰でもほしいに決まっています。通いにくい職場よりも、通いやすい職場の方がいいに決まっています。好きなことの方が、仕事を覚えるのも速いかもしれません。ただ志望動機になるのは、そうした自分の利益とは別物だということです。

「他人の利益」が志望動機になる

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志望動機として、自分の利益ばかり話しても意味がない。このことがわかれば、何に意味があるのかが自然とわかります。その答えは「他人の利益」です。「自分はこういう人のために、こういうことをしたい」「自分はこういう人のために、こういうことができる」という他人の利益を考えた志望動機であれば、自分の利益ばかり考えているよりも納得してもらえます。

ある医大生は中学生だった時に、東日本大震災を経験しました。彼の住んでいた町は津波が直撃し、千人以上が亡くなる大きな被害を受けました。彼の家族は無事だったのですが、通っていた学校の体育館が避難所になりました。その時、彼は集まっていた避難者たちの顔をまともに見ることができなかったそうです。

「人は必ず死ぬけれど、その死がせめて安らかなものであるように寄り添いたい」。それが医者を志した彼の志望動機です。この志望動機には、「同じ町の住人」との人間関係が含まれています。「残された自分たちは、亡くなった人たちから何かを託されているのではないか」。彼はそう考えることがあるそうです。

医者になるのは並大抵のことではありません。受験勉強も大学のカリキュラムも病院での実習も、聞いているだけで頭が下がるような苦労を伴います。しかし、彼はそれを見事にこなしています。説得力のある志望動機はただ他人を納得させるだけでなく、自分自身も納得させて、やる気を奮い立たせてくれます。そして、そうした志望動機には自分以外の誰かが絡んでいます。行動の背景には、常に人物の影響があるのです。

「自分の恩人」を思い出そう

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この医大生の動機は、震災で亡くなった人の影響を受けています。ただ、これはやや特殊な事例です。普段であれば、同じ町に住む知らない誰かが亡くなっても、自分と結びつけて考えることはまずありません。しかし震災のような大きな出来事が起こった場合、体験した人間同士を結びつけ、強い動機を生み出すことがあります。

そうした大きな出来事を体験していない場合は、自分が世話になった恩人のことを思い出してみてください。たとえば今回のように医者志望の場合、「医者が自分の命を救ってくれたから、自分も誰かの命を救いたい」というのが、誰でも納得できる志望動機になります。

誰かに生かされた経験、誰かに救われた経験、誰かに助けられた経験を思い出してみてください。それは家族かもしれませんし、友人かもしれませんし、医者や弁護士のようなプロフェッショナルかもしれません。その恩人に対して浮かんでくる感謝の念を思い出して、「だから自分はこれをするんです」と言葉にすると、それが志望動機になります。

自分が辛かった時や苦しかった時に、救われた経験や助けられた経験はオリジナルです。「あの震災じゃ一万人も死んでるからよくある話だね」とか「医者に救われたから医者になりたいなんてありきたりだね」などと、心ある人ならばこき下ろしたりしません。

そもそも人類の歴史で、たった一度しか起きたことのない出来事などありません。宇宙飛行士ですら、これまでの累計で545人もいます。しかし、人間は一人一人がオリジナルです。たった一人しかいない自分と、たった一人しかいない自分の恩人。その間で交わしたやりとりから生まれているならば、その動機もまたオリジナルになります。

人間は忘れっぽい

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大切なのは、その経験を覚えていること、自覚していることです。人間は忘れっぽい生き物です。どんなに感動したことでも、どんなに感謝したことでも、時が経ち、色々な出来事が重なるにつれて忘れてしまいます。そして、そのせいで「自分が何をしたいのか」も、「なぜそれをしたいのか」も忘れてしまいます。しかし、忘れてしまったのならば、思い出せばいいだけです。

進学、就職、転職、退職、結婚、離婚。人生には単なる理屈ではなく、「自分はこうする」という信念を求められる瞬間が訪れます。そのために自分が受けた「人物の影響」を記録することで、常日頃から信念を養っておく。それが「マインドレコーディング」です。

「志望動機なんて無駄、無意味、どうでもいい」。そう考える人もいるかもしれません。それならば志望動機を求める企業に就職しなければいいだけです。会社が必要だと思うものを、自分は必要だと思わないならば、考え方が違うのだから無理してそこで働く必要はありません。

しかし、実際はほとんどの会社が志望動機を求めます。それは志望動機から、その人の人格が透けて見えるからです。積極的に嘘をついて騙して入社しようと考えているなら別ですが、真面目に就職しようとして、真面目に志望動機を書けば、そこに自分の人格がきちんと宿ります。自分の本質的な部分を評価されて、「我が社に欲しい人材だ」と会社に思われて就職した方が、お互いにとって幸せな関係が築けます。

「あの時、あの人が、ああ言ってくれたから、今の自分がある。だから自分も同じように、誰かのためになりたい」。このような「誰かに心を揺さぶられた体験」から生まれた仕事を、マインドレコーディングでは「志」と呼んでいます。ぜひ、自分の志について考えてみてください。自分の利益ばかりを考えていた時よりも、はるかにたやすく説得力のある志望動機が思いつくはずです。

まとめ

・「自分の利益」は志望動機にならない。
・「他人の利益」が志望動機になる。
・「自分の恩人」=「自分の仕事」。
・感謝も感動も簡単に忘れてしまう。
・感謝や感動を思い出せば、それが志望動機になる。

人生を変えるマインドレコーディング』(扶桑社)

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佐々木誠

佐々木誠

作家。コンサルタント。「人物の影響」を特定して人生を変える「マインドレコーディング」を提唱。個人相談サービス『星を辿る』を運営し、心臓外科医、税理士、スポーツ振興の社団法人理事、小学校の教師など様々な業種にクライアントを持つ。日刊SPA!にて「魂が燃えるメモ」を連載。『人生を変えるマインドレコーディング』(扶桑社)発売中。

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