マインドレコーディング

働く意味がわからなくなったら、何をすればいいのか?

「お金のため」では納得できない

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「どうして自分はこの仕事をしているんだろう」。仕事をしていると、そんな風に働く意味がわからなくなることがあります。この時に、「お金のため」「生活のため」「成長のため」といった理由を考えても、納得はできません。働く意味が見つかるのは、人間関係だからです。

人間関係は「自分」と「相手」でできています。自分だけでは、人間関係にはなりません。「お金のため」「生活のため」「成長のため」といったよくある理由では、この自分だけに留まってしまい、相手が含まれていません。だから、働く意味として納得できないのです。

働く意味には、自分と相手の両方が必要です。たとえば自分の仕事を通して、誰かに感謝されれば、働く意味が感じられます。反対に誰にも感謝されなければ、働く意味がわからなくなります。ただそれだけです。しかし油断していると、この「それだけ」のことがわからなくなります。人間には、複数の「人物の影響」が常に働いているからです。

どうして医者をやっているのか?

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ある心臓外科医の男性は40歳を目前にして、「医学部を卒業して、ひたすら医者として働いてきたけれど、それだけでいいのだろうか」と疑問を持ちました。彼の疑問の根底には、自分が担当した患者の影響がありました。

私が「どうして医者をやっているんですか?」と問いかけると、彼は「父親が医者で、尊敬できる上司に出会えたからです」と答えました。しかし、「父親」や「尊敬できる上司」の影響は、医者として働くことの励みになるはずの、肯定的なものです。それならば「医者だけでいいのか?」と疑問を持つことはありません。その答えは彼の現状にマッチしていませんでした。

私が「いえ、違うんです。どうして医者をやっているんですか?」ともう一度問いかけると、彼はしばらく押し黙り、「僕が医者をやめるには人が死にすぎました」と答えました。そして、「僕の心にはお墓があるんです。それは自分が救えなかった患者たちのお墓です。その心のお墓がある限り、僕は医者をやめることはできません」と続けました。

誰かの死は、それを看取った者に強い影響を与えます。医者という仕事はその影響にさらされ続けます。人間はいつか必ず死ぬからです。彼にとって患者の死は、「医者をやめることはできない」という呪縛になっていました。その重圧はあまりに大きく、一人の人間が抱えていいものではありませんでした。

死の影響に向き合う時にすべきなのは、「弔い」です。私は「心にお墓があるというなら、私はそれを否定しません。でも、そのお墓に御墓参りをしてください。お墓参りは亡くなった人のためだけではなく、残された人のためでもあると、私は思います」とアドバイスしました。すると彼は「その患者さんは亡くなってしまったのだけれど、患者さんの家族が僕に何を言ってくれたのかを思い出しました」と言いました。

それから一年後、彼から「自分の小説が世に出るように動いてみます」と連絡がありました。そして、その年末に彼の作品が出版されました。心臓外科医という仕事も続けています。彼は二年かけて、「医学部を卒業して、ひたすら医者として働いてきたけれど、それだけでいいのだろうか」という疑問に答えを出せたのです。

誰かの呪縛から抜け出すには?

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一つの行動には、たくさんの人物の影響が結びついています。父親が医者だから。尊敬できる上司に出会えたから。自分の心に救えなかった患者のお墓があるから。その亡くなってしまった患者の家族が何を言ってくれた思い出したから。そうした人物の影響の足し引きで、行動できるかが決まります。肯定的な影響が上回れば、信念を持って行動できます。反対に否定的な影響が上回れば、疑念を抱いて行動できなくなります。

信念を持って行動するのに大切なのは、「思い出すこと」です。この心臓外科医の男性は、何か新しい体験をしたわけではありません。ただ自分のこれまでを振り返り、忘れていた体験を思い出しただけで、「医者として働く意味」を見つけられています。私はその思い出す手伝いをしただけです。

人物の影響にはいくつかの種類があります。自分の背中を押しくれて励みになるものもあれば、自分の足を引っ張る呪縛になるものもあります。怒りや悔しさを感じてバネになるものもあれば、本来進むべき道から外れてしまう脇道になるものもあります。

「呪縛」の影響はとても厄介です。誰かの影響が呪縛になると、他の選択肢が見えなくなります。「こうするしかない」「こうしなければならない」といった発想になったら、大抵は誰かに呪縛されています。影響が大きければ大きいほど、その考えとは裏腹に、「本当にこれでいいのか」という疑念が強くなります。なぜなら信念とは、たくさんの選択肢を肯定しつつ、「自分はこれをする」と選択するものだからです。

誰かの呪縛から抜け出せば、今まで思い出せなかったことを思い出せるようになります。呪縛から抜け出すコツは共感です。誰かの悩みや苦しみ、悲しみを聞いて、「自分にも似たようなことがなかったか?」と考えると、一人では思い出せなかった出来事を思い出せます。こうしたことを日頃から意識していると、一人で抱えているものが少しずつ減っていき、悩んだ時に答えを早く出せるようになります。

大切なのは「思い出すこと」

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人間は忘れっぽい生き物です。どんな感動したことでも、どんなに心を揺さぶられたことでも、時間が経つにつれて、その印象が薄れていきます。そのせいで、「これからはこうしよう」と思った決心も薄れていきます。働く意味がわからなくなった状態は、これに当てはまります。しかし、忘れてしまったのならば、思い出せばよいだけです。

お金や生活や成長といった、「何か」について考えた時に浮かんでるのは理屈です。家族や友人や同僚といった、「誰か」について考えた時に浮かんでくるのが信念です。人生には理屈ではなく、信念を求められる瞬間があります。「働く意味」に悩むのは、その瞬間の一つです。そして、その瞬間のために「人物の影響」を記録することで、日頃から信念を養っておく。それが「マインドレコーディング」です。

「働く意味」がわからなくなったら、仕事で関わってきた相手のことを思い出してみてください。それはお客さんかもしれませんし、同僚かもしれません。あるいは、自分がその仕事を志したきっかけになった人かもしれません。誰かとのやりとりに、「だから自分はこの仕事をするんだ」と理由を見つけられれば、働く意味について悩むことはなくなります。ぜひ試してみてください。

まとめ

・働く意味は「人間関係」にある。
・人間関係は「自分」と「相手」でできている。
・人物の影響は「励み」にも「呪縛」にもなる。
・肯定的な影響が上回れば、信念を持って行動できる。
・仕事で関わった人物とのやりとりを思い出せば、働く意味が見つかる。

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佐々木誠

佐々木誠

作家。コンサルタント。「人物の影響」を特定して人生を変える「マインドレコーディング」を提唱。個人相談サービス『星を辿る』を運営し、心臓外科医、税理士、スポーツ振興の社団法人理事、小学校の教師など様々な業種にクライアントを持つ。日刊SPA!にて「魂が燃えるメモ」を連載。『人生を変えるマインドレコーディング』(扶桑社)発売中。

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