いい人が傷つく理由。自己犠牲と奉仕の違い

闘争

先日、母が知人のお見舞いに行きました。病院の場所が不確かというので、私が道案内を引き受けました。

私自身は、お見舞いの相手と面識がありません。なので面会の間、病院のロビーで待っていたのですが、戻ってきた母が「病気になるのも無理はない」と言いました。

話を聞くと、その方はかなり無理をして働いていたそうです。フルタイムのパートで働きながら、朝3時に起きて新聞配達もしていたとのこと。それでいて家事もこなしていました。

旦那さんは現役で働いており、子供はすでに手を離れています。母が確認した限り、経済事情的にはそこまで働く理由はないようです。

にもかかわらず働いてしまう。そんな彼女に対する周囲の評価は「真面目」で「いい人」です。

いい人は時に自分のキャパシティを超えてなお、いい人であろうとします。すると「頼まれごとを断れない」「自分よりも他人を優先する」その性格につけこむ者が現れ、面倒事を押し付けようとします。

いい人は馬鹿ではありません。相手の思惑に気づきつつ、その上で面倒事を引き受けます。「嫌だと感じつつ引き受ける」のは自分に対する裏切りであり、心に大きなダメージを与えます。それは積み重なり、やがて身体に異変として現れます。

医学的には「ストレスが原因」の一言で済んでしまうかもしれません。しかし、そこにはストレスでは言い表せない苦しみがあります。

その苦しみは二重基準が生み出しています。他人と自分で判断基準が違うのです。例えば会社の同僚が病気で休んでも非難しませんが、自分が病気で休むのは許しません。

おたふく風邪やインフルエンザなど相手にうつって迷惑がかかるレベルで、ようやく休むことに承諾します。それでも、心の中は罪悪感で一杯です。

相手が病気で休んでいいなら、自分も病気で休んでいいはずです。しかし、そうならないのは他人の評価があまりにも気になるから。他人が迷惑がることをあまりにも恐れるから。

母はその方に「どうしてあなたがそこまで背負わなきゃならないの」と諭したそうです。もし、私がその場にいたとしたら、同じことを言ったと思います。本人も病気を患って、そう考え始めています。しかし、できればそうなる前に気づきたいもの。

自己犠牲と奉仕は異なります。自己犠牲は自分が納得していないにもかかわらず相手のために働きます。それに対し、奉仕は自分ができる形で相手に貢献します。

自己犠牲は自分のためにも相手のためにもなりません。自分を傷つける行為であることはこれまで話した通りですが、それは同時に相手から「学びの機会」を奪ってしまいます。

その人が本当に困ってあなたを頼ったのか。それともただ面倒ごとを押し付けているだけなのか。私たちにはそれを見極める判断力があるはずです。

自己犠牲がお互いのためにならない一方、奉仕はお互いにプラスに働きます。私はビジネスコンサルの際に、必ずその人の「美意識」について考えてもらいます。

頼みごとに応ずるかは、あなたの美意識で判断しましょう。美意識がNOと言っているのに、YESと答えてしまうとそれはストレスになります。常にNOと言い続けても、社会生活に支障をきたします。

必要なのはその都度、あなた自身が「YES」か「NO」か判断すること。その基準はあなたの自身の美意識です。美意識を培えば、嫌なのものは嫌と人に言えるようになります。

たまには仕事も家事も休んで、丸一日遊んでみてください。あなたが好きなことをしてください。映画館に美術展。自然公園やフリーマーケット。ゆっくり本を読んだり、絵を描いたりしてもいいでしょう。

自分が好きなこと。強い興味を持つこと。気づいたらそればかりやっていること。そこには単なる楽しみを超えて、誰かに貢献できる可能性が含まれています。

あなたが一日遊んでも、世界は変わりなく運行します。その事実を感じてみてください。そして、それは決してあなたが役立たずというわけではないのです。

強いられた自己犠牲はいつの時代も、どんな環境でも繰り返される光景です。学生が掃除を押し付ける。バイトがシフトを穴埋めさせる。今回のお見舞い相手はもうすぐ50歳になる方でした。こうした気づきに年齢は関係ありません。

他人のために働くことには自己犠牲と奉仕の二種類がある。この知識とそれに基づく判断力があれば、無益な自己犠牲を減らせるようになるでしょう。あなたの幸せ、それがあなたの最優先事項です。

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