マインドレコーディング

ターゲティングのコツ。リアルな顧客像を作れないのはなぜか?

誰に向かって仕事をするのか?

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「誰に向かって仕事をするのか」。ターゲットを絞るのはビジネスの基本です。理屈で考えれば、性別、年齢、最終学歴、家族構成、職業、趣味といった項目で絞ることになります。しかし、そうした項目でいくら絞り込んでも、その顧客像をリアルに感じられないことがあります。もし身に覚えがあるのなら、ビジネスとは別の部分に理由があるのかもしれません。

「誰に向かって仕事をするのか」は一つの決断です。そして、決断には「人物の影響」が関係しています。たとえば、医者に命を救われて、「自分も医者になろう」と決断するのはその典型です。

人物の影響には、「原動力」と「呪縛」の2種類があります。誰かの言動が喜びや怒りになって、自分の決断を促してくれる。その影響が原動力です。医者に命を救われて自分も医者になろうとする場合、その医者が原動力になっています。

一方、誰かの言動が悲しみや常識になって、自分の決断を妨げてくる。その影響が呪縛です。そして「いくらターゲットを絞り込んでも、顧客像がリアルにならない」という場合、誰かが呪縛になっているのかもしれません。

障害者に関わり続けた人生

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ある男性は「祖母の家にいた居候」の影響に気づくことで、「誰に向かって仕事をするのか?」を決断できました。彼がまだ子供だった頃、母方の祖母の家に家族でも親戚でもない居候がいました。その居候は部屋に引きこもっていて、食事も祖母が部屋に運んでいました。

彼が高校生になった時、その居候はいなくなりました。葬式に呼ばれることもありませんでした。「いま思えば、あの人は戦争孤児の障害者だったのだと思います。何かできることはないかと子供ながらに考えたのを思い出しました」。彼は私にそう言いました。

彼はもともと教師をしていました。特別支援学校で教えると同時に、障害者スポーツ「ボッチャ」の協会で事務局長を務めていました。その後、教師を辞めて子育てアドバイザーを始めましたが、その仕事でも発達障害の子供を抱える母親を相手にしていました。

彼の人生には、常に障害者が関係していました。また、祖母の実家で暮らしていた彼と同い年の親戚も、やはり障害者に関わる仕事に就いていました。このことからも、その居候に影響を受けているのは決定的でした。

「自分が向き合いたいのは子供だった」

それが、その居候の影響に気づいたことで、「自分が本当に向き合いたいのは、障害者でも母親でもなく子供だ」と決断できました。その時に閃いたのが、「ボッチャを障害者ではなく、健常者に普及させる」というアイディアです。このアイディアが周囲に受け入れられて、彼はボッチャ普及を目的にした社団法人の理事長になりました。

理事長という肩書きを持ったところ、さらに周りの目が変わり、地元のスーパーと協力して、各店舗にボッチャのコートが設置されることになりました。また、人権教育のシンポジウムに呼ばれて400人の前で話したり、地元のラジオ番組に出演したりするようになりました。さらにボッチャの道具を販売するサイトを始めたところ、そのサイトからも利益が出るようになりました。

教師を辞めた時、彼は「ボッチャは障害者向けなのでお金にならない」と考えました。また、「子供のために仕事をしたいけれど、子供はお金を持っていないので、親のために仕事をするしかない」とも考えました。そう考えて母親をターゲットにしていた時は鳴かず飛ばずで、教師時代の貯金を切り崩す生活を送っていました。

それが「健常者向けのボッチャ」に舵を切ることで、お金や人の歯車がうまく回り始めました。このように「誰に向かって仕事をするのか?」という決断は、ビジネスの基本であるともに、人生の基本でもあります。

誰かに話してはじめて気づける

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決断のコツは、「自分は誰のことを気にしているのか?」という問いかけです。そう問いかけることで、誰かの顔がパッと浮かんでくると、「じゃあ、こうしよう」と決断できます。また、常日頃から「この人に対して、こう思った」という記録をつけていると、いざという時のための決断力を養えます。それがマインドレコーディングです。

しかし、人物の影響には、一人では気づけないものもあります。祖母の家にいた居候に対して、「何かできることはないか」と彼が考えたのは、20年以上も昔のことでした。また、その居候の存在は親族の間でタブーになっていて、一度も話題になったことがありませんでした。このような場合は、人物の影響が心の深い部分に作用していてなかなか気づけません。

こうした場合に役立つのが相談です。彼が居候の影響に気づいたのも、「親族間のタブー」をテーマにして私と相談している最中でした。誰かと話している時に、相手の体験談に対して、「そういえば自分にも似たようなことがあった」と連想が働くと、心の深い部分にある人物の影響に気づくことができます。

理屈を勉強する前に、まず影響に気づく

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人物の影響はビジネスに大きく関係します。「誰に影響を受けたのか?」を突き詰めていくと、次第に「誰に影響を与えるのか?」を考えるようになります。そして、この影響を与えたい人物が、いわゆる「ビジネスのターゲット」になるからです。

こうした確認を行わずに誰かに呪縛されていると、自分でも気づかないまま、そもそも商品にも顧客にも興味のない仕事を選びかねません。その状態で「ターゲティング」や「セグメンテーション」や「ペルソナ」といった横文字の理屈を並べても、絵空事や机上の空論になってしまいます。自分の作った顧客像をリアルに感じられないのは、そのためです。

もし、いくら横文字を勉強しても、「これでこの仕事はうまくいくぞ!」と実感できないのなら、まず人物の影響を意識してみてください。自分が影響を受けている人物に気づいて呪縛から抜け出し、「自分はこういう人のために働く」と決断できた時、自分も他人も納得できる仕事ができるようになります。

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佐々木誠

佐々木誠

作家。コンサルタント。「人物の影響」を特定して人生を変える「マインドレコーディング」を提唱。個人相談サービス『星を辿る』を運営し、心臓外科医、税理士、スポーツ振興の社団法人理事、小学校の教師など様々な業種にクライアントを持つ。日刊SPA!にて「魂が燃えるメモ」を連載。『人生を変えるマインドレコーディング』(扶桑社)発売中。

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