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頑張り続けてきた仕事がイヤになったら……「人のため」より「世のため」が大切なワケ

投稿日:2019年9月10日 更新日:

「世のため人のため」が人を絶望に追い込む

Fotorech / Pixabay

教育者の「夜回り先生」こと水谷修氏が自身のブログを閉鎖した。彼は10日ほど前に、次のような記事を連続で投稿している。

「さようなら。哀しいけど さようなら。もう、疲れました。これで、このホームページは閉じます。さようなら」「私に相談している人の何人が私の本を読んでくれているのか。誰かから聞いて私に相談。でも、それは哀しい。ただひたすら続く何百本の日々の相談。私の本を読んでくれればそこに答えが。疲れました」

この投稿はネットで話題になり、「頑張り続けてきたのだから、しっかり休んでほしい」といったコメントが集まっていた。しかし、ここには「頑張りすぎたから休む」という対策だけでは追いつかない、もっと深い問題が潜んでいる。それは「何のために働くのか?」という問題だ。

仕事には二種類ある。「世のための仕事」と「人のための仕事」だ。そして、「世のため」と「人のため」は区別しなければならない。「世のため人のために働こう」というスローガンがあるが、この二つを混同することが、たくさんの人を絶望に追い込んでいる。

「人のための仕事」と「世のための仕事」の違い

rawpixel / Pixabay

「人のための仕事」は「一対一」の仕事だ。これはコミュニケーションの仕事と言い換えることもできる。自分の目の前にやってきた相談者に対して、時間をかけてやりとりしながら、その人にぴったりはまるオーダーメイドの答えを見つけていく。

それに対して、「世のための仕事」は「一対多」の仕事だ。こちらは一方通行の仕事と言い換えることもできる。自分のもとに集まった大勢に対して、全員に当てはまるレディメイドの答えを与えていく。

「人のための仕事」と「世のための仕事」には、それぞれ一長一短がある。人のための仕事は、相談者の人生を好転させる可能性が高いが、対応できる量に限りがある。世のための仕事は、相手に与える影響は小さくなるが、一度に多くの人に伝えられる。

これは少し計算してみればわかることだ。一人のために一時間を費やすマンツーマンの人生相談を朝の九時から夜の九時までやったとしても、1日に見れられる人数は12人。1日も休まず働いても、1週間で84人、1ヶ月で360人、1年で4380人。50年働いても21万9千人しか相手にできない。これは日本の人口(1億2000万人)のわずか0.1825%、世界の人口(60億人)のわずか0.00365%にすぎない。

これに対して、一度に100人に話すセミナーや、1ヶ月に100万PVを超えるようなブログなら、もっと多くの人に伝えることができる。しかし、その一方で、相手の人生を変えるようなきっかけにはなりにくくなる。「セミナーに出ても何も変わらなかった」とか「ブログを読んだけど、読んで終わり」という人が出てくる。

つまり、人のためにやろうとすると、世のためにはならず、世のためにやろうとすると、人のためにはならない、ということだ。これは世の中がそういう構造になっているからで、誰が悪いわけでもない。しかし、私たちはこれをなかなか受け入れることができない。悩みを抱えて苦しむ人間を見捨てたくないからだ。

「人のため」にこだわると自分がつぶれてしまう

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自分の仕事が、相手の人生を変えるきっかけになるのは素晴らしい体験だ。「あなたのおかげで人生で変わりました」と言われると自分の仕事に自信がついて、「これが自分の天職だ」「自分は一生、これを仕事にしていくのだ」と考えるようになる。しかし、それゆえに人は自分の限界を超えた仕事に手を出すようになる。

「人のための仕事を50年で21万9千人」と書いたが、これは実際には無理な話だ。なぜなら、その前に相談役の自分が死ぬからだ。相談者の深い悩みに向き合うのは簡単ではない。深い悩みには絶望や死が関わっている。そして、それに無防備に触れ続けていられるほど、人の心は強くない。個人差はあるが、普通なら三年くらいで心身の健康を損なわれ始め、やがて自殺や病死に至る。

私は人生相談を受けるなかで、このことに早い段階で気づいた。「このペースで続けたら早死にするな」と直感した。そして、その瞬間から「人のための仕事」から「世のための仕事」に徐々にシフトしていった。出版もその過程で起きたことだ。

そもそも仕事は「人のため」から「世のため」にシフトしていくのが基本だ。まず目の前の相手を助けようとして、あれこれ試しているうちに、誰にでも当てはまるような法則が見えてくる。そして、その誰にでも当てはまるような法則を、書籍やブログやセミナーといった形で拡散するようになる。

私は根が薄情なので、そのシフトを受け入れることができた。しかし、なかなか受け入れられない心優しい人間もいるだろう。水谷氏は高潔な人物なのだと思う。出版、ブログ、講演、テレビ出演など「世のための仕事」をしながら、数百本の相談という人のための仕事を日々受けていたというのだから、驚嘆するほかない。彼について、小学校で教鞭をとる教師と話す機会があったが、「むしろよく今までやってこられた」と同情されていた。

「自分には相手の人生を変える知識と技術がある。しかし、それでも世の中は何も変わらない」

水谷氏に限らず、この乖離に絶望を覚えている人間がたくさんいると思う。私には年収が億を超えている友人がいる。その友人から学んでいた青年が同じように億を稼ぐようになったのも近くで見ていた。しかし、それで「世の中から、すべての貧困をなくせるか」というと、それは無理だ。人を変えるのと、世を変えるのとでは、大きな隔たりがある。

次は「世のため」に働こう

qimono / Pixabay

世の中を変えるのは一年後の話でもなければ、十年後の話でもない。百年後の話だ。自分の世代の話でもなければ、自分の子供の世代の話でもない。自分の孫の世代の話だ。いま話していることが、百年後に影響を及ぼす。それが本当の意味の、世のための仕事だ。書籍に書いたことが、講演で話したことが、今すぐ変化を起こさなくても、その仕事に邁進してほしい。

世のための仕事を始めると、「あいつは講演や出版でラクして稼ぐようになった」と批判する人間が必ず出てくるが、そんな言葉には耳を傾けなくていい。彼らは「目の前の人間の悲しみを癒やす喜び」と「それでもこの世からすべて悲しみをなくすことはできないという現実」の間で苛まれる苦悩を知らないし、想像したこともないからだ。

繰り返しになるが、水谷氏は高潔な人物なのだと思う。自分が追い詰められるほど、悩みを抱える人々と向き合ってきたのだから。薄情な私はそうしなかった。「人のため仕事」と「世のための仕事」は別物だと認識した瞬間から、その二つの仕事量を調整するようになった。今でも対面相談の門戸は開いているが、それでも人の死や絶望にまつわるような相談は、自分が潰れない程度に抑えている。

誰かの相談に乗る「人のための仕事」が無駄というわけではない。人のための仕事をこなさなければ、世のための仕事はできるようにならない。「自分の伝えたいことはこれだ」というメッセージを掴むのは、人のための仕事を通じてだ。しかし、世に伝えるべきメッセージを掴み、「世のための仕事」ができるようになったら、「人のための仕事」との間でバランスを取ろう。でなければ、自分がつぶれてしまう。

仕事は「続けられること」が大切だ。伝え続けるからこそ、それが当たり前になる時代が遠い未来でやってくる。一人の人間が世界のすべての悲しみを背負うことはない。この話で心が軽くなる人間も少なからずいると思う。ぜひ自分の仕事を変えるきっかけにしてほしい。世の中を変えるには、「人のための仕事」と「世のための仕事」をうまく両立できる人間がもっと必要だ。

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佐々木誠

佐々木誠

作家。コンサルタント。自己啓発とビジネスを結びつける階層性マーケティングや、自分らしさを取り戻すマインドレコーディングを提唱。様々な業種にクライアントを持ち、現在はコーチング業の傍らオンラインサロンを主宰。日刊SPA!にて「魂が燃えるメモ」を連載中。『人生を変えるマインドレコーディング』(扶桑社)発売中。

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